夏になると«とうもろこしご飯»を炊きたくなる
私が小さい頃、夏が来るたびに、台所から甘い香りが漂ってきました。
炊き立てのごはんの湯気といっしょに、ふわっと立ち上がる、とうもろこしの香り。
母が作ってくれた«とうもろこしご飯»は、夏のわが家の風物詩でした。
まるでジブリ映画『となりのトトロ』の一場面のような、田舎の縁側。メイちゃんが「おかあさんにあげるの!」と大きなとうもろこしを抱えていたあの姿を思い出すたび、わたしの中にも、あの香りと味がよみがえってきます。
と書けば、とても美しい夏の思い出の描写ですが、
実は、私が小さい頃、家で«とうもろこしご飯»を食べた記憶はまったくないのです。
炊き込み系のご飯を作らない家ではなく、グリーンピースご飯や栗ご飯、五目炊き込みご飯などは食べていました。
しかし、なぜか、«とうもろこしご飯»はない。
とうもろこし自体は、夏場はよく家に出ていました。
おそらく、ご飯と一緒に炊くよりも、とうもろこしは、そのまま食べた方が美味しいという考えだったのではないでしょうか。
そんな幼い頃の思い出はさておき、
夏に近づき、とうもろこしが出回り始めると、SNS等で«とうもろこしご飯»の画像をよく見るようになります。
今年も、そのシーズンとなり、ちょうど「とうもろこし」が届いたので、作ってみました。
旬のごちそう、«とうもろこしご飯»のつくり方
«とうもろこしご飯»は、見た目はシンプルでも、驚くほど奥深い一品。
とくに、生のとうもろこしを芯ごと炊き込むことで、粒の甘みと香ばしさ、そして芯から出る自然な旨味が、お米にしみわたります。
材料(2合分)
- 生とうもろこし:1本
- 米:2合
- 水:適量(通常の炊飯分)
- 以下は好みで。なくても大丈夫です
塩:小さじ1
酒:大さじ1
作り方
- とうもろこしは皮をむき、粒を包丁でそぎ落とす。芯も捨てずに取っておく。
- 洗った米に酒と塩を入れ、いつも通りの水加減に。
- 粒と芯をのせて炊飯スタート。
- 炊き上がったら芯を取り除き、ふんわり混ぜて完成。
- お好みで、炊き上がりにバターを少し加えて混ぜると、洋風の香ばしさがプラスされて、これもまた絶品です。
実は、戦国時代に伝わっていた? とうもろこしの歴史
とうもろこしは、もともと南米・中米が原産の植物。
世界中に広まったのは大航海時代の16世紀と言われています。
日本には、戦国時代の終わり頃、ポルトガル人やスペイン人によって伝来したといわれています。当時は「ナンバ(南蛮)」や「モロコシ」などと呼ばれ、主に観賞用の作物でした。
その後、江戸時代には「とうきび」や「もろこしもち」として一部の地域で雑穀代わりに食べられるようになり、明治以降、アメリカから甘みのあるスイートコーンが入ってきたことで、現在のような食文化が根づいていったようです。
日本各地の“ブランドとうもろこし”たち
近年は、日本の各地で個性あふれる品種が栽培され、「ブランドとうもろこし」として人気を集めています。
ここでは、とうもろこしご飯にぴったりな、甘くて香り高い品種をご紹介します。
- 北海道:ゴールドラッシュ
粒が大きく、ぷりっとした歯ごたえと甘さが特徴。
朝採れのゴールドラッシュを炊き込めば、まさに“ごちそうご飯”。 - 長野県:ドルチェドリーム
昼夜の寒暖差が育む、しっかりとした甘みと食感。
バイカラー(黄と白の混ざった粒)が見た目にも楽しく、見栄えも◎。 - 山梨県:きみひめ
早朝に収穫されたものは、生でも食べられるほどの甘さ。
香りが強く、ご飯に炊き込んだときの風味が格別です。 - 群馬県:サニーショコラ
とろけるような甘さと皮のやわらかさで、子どもにも大人気。
もち米を混ぜて炊くと、デザート感覚のとうもろこしご飯にも。
とうもろこしは、季節と土地が育てるもの
とうもろこしは、同じ品種でも育つ土地や天候で味が変わるようです。
日本は南北に長く、北海道の冷涼な気候から九州の温暖な地域まで、気象条件が大きく異なります。例えば、北海道では昼夜の寒暖差を活かして糖度の高いとうもろこしが育ちます。
また、農家や自治体は、「普通のとうもろこしではなく、うちの地域でしか作れない特別な品種を作ろう」と工夫してきました。そうした工夫が、「この土地の、この時期のとうもろこしが一番!」と地元で愛されるブランドが生まれてきたようです
そのような、ご当地のとうもろこしを買いに、
今年の夏は、ちょっと遠出して行く旅も楽しいかもしれません。
夏の朝、直売所で買った採れたてのとうもろこし。
皮をむくと、つやつやの粒がぎっしりと並んでいて、それだけでなんだかワクワクしてしまいます。お気に入りの一本に出会えたら、その粒を丁寧にそいで、とうもろこしご飯にしてみてください。
炊飯器のフタを開けた瞬間の香りに、きっと笑顔になるはずです。
やさしい甘みと、ほのかな香ばしさ。ご飯の一粒一粒に、夏の光がしみこんだような、そんな一品です。
Bon appétit♪